なあ、お前の中身が見たいよ

百七歳の野望「は、あっ、あ、あ、」

まさか自分がこんな考えを起こす人間だとは思いもしなかった。
娼婦に性欲以外のものを見出すだなどと、論外ではないのか。
いまいち自分を信じられないでいる。自分が自分ではないような感覚に陥る程に。
ああくそ、何時までも悶々すんのは性に合わねえ。

少し、金を持て余したときはいつもふらふらと歓楽街へ足を運び、女を買う。
そうだ、ここまではいつもの事だ。珍しくもないし、今に始まったことでもない。平均的。
抵抗も、愛も、遠慮も、柵も、何も必要無い。そしてそれに疑問を浮かべた事すら、無い。無い筈だ。所詮女なんてモノはいや、やめよう。口に出さない方がいいこともある。
夜風が涼しい。いつの間にこんな季節になったのだろうか。

「や、あっああっはっ、あ、ティキさま、っ」

「はッ、うるせ・・・」

売春婦の夢はなんだろうな。
ふとした疑問は脳内の3割を占めた。残りは言わずもがな、性欲だか快楽だかの欲そんなものに塗れてやがる。陳腐な言葉を並べて、それから見受けをしてやると耳元で優しく囁いてやれば喜ぶのか、否か。

「ティキさま、」

初めて顔を合わせた時とは打って変わって、ひどく品のいい衣類も靴(少しヒールが高すぎる気がしないでもないな)も床に転がり、肌蹴落ち、オレの腕の中で淫らになり果てているこの娘もそうなのか。否か。ああ馬鹿らしい。そうとは言っても、オレはこいつに例の感情を抱いてしまっているようだ。冷静なのか、錯乱しているのか状況判断が上手い具合に出来やしねえ。この感情は並行し、殺人衝動を駆り立てもするようだった。(オレだけなのだろうか?)

そして初めてこの女を見たときに感じた衝動は今尚、俺の胸中で鳴り響いており、欲求に掻き混ぜてそのままこの女を犯している現状は俺も認めている。

跳ねる四肢を他所に、と名乗ったこの女の腰を捕まえ、掴んで、自らの腰を動かせる。そうすれば一際高い声が聴けた。女(と呼ぶべきか)の口は、全身麻痺で体のコントロールが利かぬかのようにだらしなく開き、唇は唾液に濡れている。ベッドランプに共鳴するかのように、てらてらと奇妙に光るそれは微妙な角度で色合いが違った。それを見ているとひどく不思議な気分になったものだ。至極単純に、感情の赴くまま女の首筋に痕を散らせれば、思いついた様に口を食い縛り小さくうめいた。ああ、口を閉じることも出来たのか。大袈裟に喘いでいるわけではなさそうだった。そこがいじらしくていいんだけどな。

この女が欲しいだなどと、思って、いないさ。馬鹿じゃねえか。心なんて要らねーよ。心臓なら直ぐ取り出せるしな。あはは。あは、ああ。もう訳がわかんねえよ。どうすればいいんだよ。なあ。どうなんだよ。なんなんだよお前は。ぐちゃぐちゃ。
オレの下で体液に濡れて肩で息をしている。笑う。痛みにもがく。きっと死んだも綺麗だ。
だが殺すのは忍びないのでそんなことはしない。生きている方がずっといい。